トップページ | NeXT IMPRO THEATRE 第24回公演 その3 »

NeXT IMPRO THEATRE 第12回公演

実は最近、スナドリ自身もワークショップでお世話になっている、インプロ・ジャパン
インプロとは「即興(Improvisation)」のことで、インプロ・ジャパンはその普及を目的として、個人および企業向けのワークショップや、公演活動を行っている団体である。そのインプロ・ジャパンが主催する、プロのインプロヴァイザーによるインプロ(即興演劇)公演、「NeXT IMPRO THEATRE(ネクスト・インプロ・シアター)」に行ってきた。
場所は新宿・プーク人形劇場。昔、知り合いの公演で一度だけ行ったことがあるのだが、小規模ながら基本的な劇場設備が整っており、タッパも結構あるので、通常の芝居にも十分に使える劇場である。

客席に座ったら、観客はまず受付で手渡された「タイトルカード」を記入する。内容は「行ってみたい場所(地名以外)」、「好きな言葉」、「架空のお話のタイトル」、「短いセリフを一言」の4つ。これを観客から集め、即興パフォーマンスの中でいろいろな方法で使用し、テーマやストーリー、セリフなどに織り交ぜていくというわけだ。つまり、このカードを通じて、観客自身も芝居の進行に直接参加することになるのである。
また、即興演劇ということで、当然ながら、台本も打ち合わせもリハーサルも一切ない。そのため、その場でどんなストーリーが出来上がるかは、その時でないと分からない上、同じ話は2度と出てこない。それもまた、この即興演劇公演の面白いところなのである。
さて、いろいろと考えたのち、スナドリは、

行ってみたい場所(地名以外) → 「宇宙」
好きな言葉 → 「最適化」
架空のタイトル → 「マヨネーズと私」
短いセリフ → 「それは仕様です」

・・・と書いてみた。

舞台は黒幕と「NeXT IMPRO THEATRE」の表題を背景に、表が緑色のパネル×4、黒い四角い箱がいくつか。上手の舞台を降りたところにキーボードがあり、場面に合わせて音楽を演奏する「即興ミュージシャン」が位置する。出演者は男性2名、女性1名の3名。

公演は、休憩を挟んだ2部構成になっており、1部は6種類のパフォーマンスゲーム、2部はなんと演技以外に歌と踊りも即興で織り交ぜた「即興ミュージカル」が行われる。
どのパフォーマンスも必ず「ストーリーカード」が中心となるが、単純にストーリーのテーマやタイトルを拾うだけではなく、芝居の進行の中で次々とカードを読み上げてストーリーに反映させたり、舞台上にカードをたくさんばら撒いて断続的に使ってセリフにしていったりなど、多彩な方法で取り込まれる。また、ゲームも単純にストーリーを展開するだけではなく、即興ミュージシャンのベルの合図によって、瞬時に全員の役を交換する「キャラクターチェンジ」や、現場の場所、被害者、凶器を犯人のいないところで観客が決め、それを2人の刑事が内容を知らない犯人をうまく尋問して自白させるという「現場検証」、そして、ストーリーの進行の途中で任意のところでベルを鳴らし、観客がその後の展開を自由に選択し、ストーリーを動かしていく「ディレクター」などなど、パフォーマンスのバリエーションが実に多く、まったく飽きさせず、とにかく楽しい公演である。

また、出演者たちは、人並みはずれた創造性、即応性、協調性を発揮して、即興であるのにも関わらず、かなり裏打ちがしっかりしたストーリーを次々と展開し、楽しませてくれる。即興の場合はその性格上、比較的シチュエーション芝居になりがちであるが、NeXT IMPRO THEATREではちゃんと、独白や、時間軸を変化させる場面転換などが効果的に即興で展開され、かなり普通の芝居に近い雰囲気に観えるシーンも数多くあった。
また、即興演劇と聞くと、とにかく即応性の高い演技が要求されるように思われるが、今回観て感じたのは、やはり何よりも身体表現能力に長けている必要があるということだった。当然ながら即興演劇はセットが一切ないため、出演者の身体一つで状況や状態、オブジェクトなどを即座に表現しなければならない。今回の公演でも出演者は自らの身体を巧みに使って、「右脳」とか「カメムシ」とか「カメムシの恋人」などを表情豊かに表現していた。
あとスゴかったのは第2部の「即興ミュージカル」。芝居のみならず歌と踊りを即興で織り交ぜた内容で、即興での歌はかなり難しいと思うのだが、歌もうまい上、これがなかなかに即興っぽさを感じさせないところがあり、面白かった。当然ながら、芝居から歌への切り替わりがあるのだが、フォーカスが当たってる本人、周辺の演技者、そして即興ミュージシャンが、一瞬の間に一気に呼吸を合わせる瞬間が見え、全員の技の凄さを感じた。
スナドリ自身も今現在、ワークショップに通い始めているので、その技量の凄さに刺激を受けまくり、ますますインプロへ対するやる気が燃え上がった。

ただし、公演として「ショウ」形式を取っているのだが、舞台全体がやや暗い色合いで構成されていたことが気になった。
背景や袖幕、床も黒い色調に対して、衣装も地味な色合いで、どうしてもそこに華やかさが欲しいように感じた。インプロの場合は、当然ながら役柄が常に変わるという性質があるので、ごく普通のシャツとジーンズなどではなく、もっと鮮やかな色模様の抽象度の高い(何者であるか特定されない風な)衣装がいいのではないかと思われた。また、黒い背景に小道具の箱も黒でタイトルカードのカゴも黒だったが、これも例えば原色の黄色などのような抽象化されたオブジェクト的なモノの印象が欲しいように感じた。特にタイトルカードは公演の中で、舞台と観客を結びつける重要な位置を占めるモノなので、単純なカゴや箱ではなく、観客の総意を表すような外観のモノ(例えば顔が描かれた壷とか)がいいだろう。
また、いろいろと難しい面もあるかと思うが、もう少し人数の多い状態でも観てみたいとも思った。

即興演劇の公演は、演劇全体から見ると、まだまだ規模の小さい分野であると思われる。
だが、今後様々な方法論を開発していくことによって、まったく新しい表現形態を作り出すことができる、大きな可能性を秘めたジャンルであると思った。


以下は、それぞれ行われた即興の内容のメモです。

□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

ノリのいいオープニングから始まって、以下のパフォーマンスが行われた。
(それぞれの展開の内容は記憶を頼りに書いているので、多少不正確です。ご容赦を。)

○“行ってみたい場所”から「ストレスのない世界」
内容:
単純なシーンからスタートして、途中途中で一人が次々とタイトルカードから言葉を拾い、それを即座にお話に反映させる。
展開:
仕事がいやになり会社をやめよう→と思ったら、目が覚めたらカメムシなってしまっていた→人間としては死んでいるので保険金をもらいにく→ついでにカメムシのための保険に加入する→紆余曲折があり、なぜか虫の保険の営業をすることに→虫になっても仕事かよ!→目が覚めると会社。上司にしかられた。

○“架空の物語のタイトル”から「こやんど」
内容:
まず「こやんど」って何?なんだかよく分からないので、こやんど→小さい宿、おおやんど→大きい宿とした。そこから、出演者が次々と場所に関する設定を積み上げていき(エクステンド)、ある程度積みあがったところから、芝居がスタート(アドバンス)。20分くらい?の長い即興ストーリー。
展開:
山の中にあり、普段は隠れている上、お札がないとたどり着くことができない秘密の宿「おおやんど」と「こやんど」。そこにやってきた新しい客の噂話をしている、こやんどの宿泊客たち。実はこの宿、お札にまつわる恐ろしい掟があった。新しい客は、その掟に巻き込まれてしまい、来る途中で出会ったカメムシと体が入れ替わってしまう。最後はホラーチックなエンディング。

○ペーパーズ:“架空の物語のタイトル”から「犬と猿」
内容:
舞台上にタイトルカードをばら撒き、ストーリーを進行させながら、カードに書かれている“短いセリフ”を、ストーリーのセリフとしてそのまんま使っていく。
展開:
「おひけえなすって」とヤクザ同志のあいさつ→なぜか意気投合して「カラオケ」に行こう→それを影から見ていた敵対しているヤクザ→敵のヤクザがカラオケマイクに電流を流し込む→歌っていたヤクザ死亡→復讐が達成される

○キャラクターチェンジ:“架空の物語のタイトル”から「おいらは金持ち」
内容:
3人で即興芝居をするが、途中、即興ミュージシャンがベルを鳴らすごとに、3人がその場で瞬時に全員の役を入れ替えて、そのまま話を継続する。
展開:
窓を開けることすら重労働と感じるお金持ち。何もかもをいちいちお手伝いさんが用意する。それに嫌気がさした息子が反抗。お手伝いさんにまとまったお金を渡して解雇し、自立の道を宣言する。ところが、父親に「でも結局お前も金を使うんだ」と言われてしまう。

○現場検証
内容:
架空の殺人事件の設定を観客が作り、その内容を知らない犯人役に、2人の刑事があの手この手で尋問し、その知らない内容を犯人に何とかして吐かせるという内容。
設定内容:
場所→観覧車。被害者→オーヤンフィーフィー(笑)。凶器→トランクスのパンツ。

○ディレクター:“架空の物語のタイトル”から「マヨネーズと私」(スナドリのタイトルが採用!)
内容:
タイトルをテーマにして話を進めるが、途中でベルを鳴らして話を一時停止し、観客がシーンや鍵になるモノなどを自由に決めながら続きを進行させるもの。
展開:
なぜかトイレで卵を割りつづける男。割った卵をマヨネーズ作りの授業に提出し、それでマヨネーズを作る。なぜかマヨネーズは長方形の形に固まってしまう。ここで場面転換。卵を仕入れた農場。実はその卵は亀の卵だった。その男は、その卵で作った巨大長方形マヨネーズをマスコミに発表。一番あわせるとおいしいとされる高野豆腐とともに、世界の貧しい子供たちにこのマヨネーズを提供することを宣言し、喝采を浴びる。

○即興ミュージカル:“架空の物語のタイトル”から「ミスターシンキング」
内容:
10分休憩ののちの第2部。これまでの芝居以外に、歌と踊りも即興に加えた即興ミュージカル。20~30分の長編。
展開:
ある子供の右脳が登場。「もっとオレを使ってくれればいいのに!」と脳の叫び。その子供は脳をあまり使っていないために、自分の才能を発揮できずにいた。ここで一気に場面転換。1920年代産業革命(注:産業革命は1700年代です(笑))。働き者の労働者たちと、その中で活躍する男、「ミスターシンキング」。友達と横暴な経営者に対抗するために組合を作ろうと計画する。ところがそれを妬む悪のミスターシンキングが、警察にウソのたれ込みをしてしまい、ミスターシンキングは逮捕されてしまう。ところが彼を支持する労働者たちがミスターシンキングを助け、労働者たちは経営者に勝利する。ミスターシンキング曰く、「考えることで誰もが素晴らしい力を発揮できるのだ!」・・・そして現代に戻り、そのミスターシンキングの英雄伝を聞いたその子供が刺激を受け、一気に脳を使い始めたため、突如として右脳が進化。潜在されていた才能が一気に開花する。それを草葉の陰から見ていたミスターシンキングも大喜びで幕。

すべて終わってから、今日のベストタイトルの表彰。
本日は全員一致で「こやんど」。
ずっと気になっていた「こやんど」の意味を書かれたお客さんに伺う。曰く、友達の集まりのグループ名だとか。スナドリは何かの形容を表す方言かと思っていた。たとえば、「このアイスこやんど美味しいよね」とか「あの漫画、こやんど面白え」とか「痛てー!こやんど痛てー!」みたいな感じ(笑)。
ベストタイトルは賞品として次回のNeXT IMPRO THEATREの招待券がプレゼントされた。
次回も楽しみである。

|

トップページ | NeXT IMPRO THEATRE 第24回公演 その3 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/39945/10338938

この記事へのトラックバック一覧です: NeXT IMPRO THEATRE 第12回公演:

トップページ | NeXT IMPRO THEATRE 第24回公演 その3 »