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2006年6月 1日 (木)

NeXT IMPRO THEATRE 第24回公演 その1

このたび、本家「スナドリの巣」の別館として、本サイトがスタートしました。本サイトは、将来的に「インプロ劇評」というジャンルを確立することを目標にしています。

インプロとは、台本、打ち合わせ、リハーサルなどが一切ないところからストーリーを作るエンターテイメントですが、単に「ショウとしてどうか」とか「どんなゲームとストーリーが行われたか」、ということだけではなく、その日舞台で作られたお話そのもの、とくにロングフォーム形式のストーリーそのものを中心に、感じたことを書いてみたいと思います。

しばらくは試行錯誤が続き、いろいろとツッコミどころ満載かとは思いますが、よろしくお願いします。

毎月新宿プーク人形劇場で行われています、「NeXT IMPRO THEATRE」の第24回公演について、レポートをお届けします。
公演の形態や、詳細な流れなどについては、こちらか、前回の劇評をご覧下さい。

細かいインプロ・ゲームについては、最後にまとめて書きますが、長めの形式は第1部のロングフォーム、第2部インプロミュージカルと2つの作品が作られました。

今回の劇評は、第1部のロングフォームについて、書いてみたいと思います。

■ロングフォーム「タイトル:世界平和」 インプロチーム:imp

まずは、タイトルからの連想で、お話の土台になる部分のスケッチからスタート。
いろいろと話していくうちに、「まずは家庭から!」ということで、とある日本の家庭が描かれていく。父、母、娘の3人家族。なぜかあまりコミュニケーションが行われない家庭。普段は付箋とかメモ書きばかりでのやりとりで、あまり直接は話さない。大事な話は、メモではなく手紙などをしたためて話すらしい。
食卓のある部屋の壁には予定表があり、誰かに何か言わなくても、家族がどのように行動しているか分かるようになっている。そして別の壁にはなぜか世界地図。いつも窓も閉め切られ、食事はほとんどが冷凍だった。

おおよそ大学卒業直後ぐらいの年であろう一人娘。なにやら両親に話さなければならない大事なことを抱えている様子。そして娘思いでありながら、口べたな父。二人とも本当は、たくさん話したいことがあるはずなのだが、普段からなかなか面と向かって話さない家庭のため、本当のお互いの意志をどうしても伝え合うことができなかった。
実はその娘は、海外のボランティア活動に自分の生きる道を見出し、数日後になんと東ティモールに行かなければならない事情を抱えていた。渡航を支援してくれるボランティア団体の人から、両親の承諾について訪ねられ、このままではダメだと娘は、父親に事実を伝えることを決意する。
勇気を振り絞って、渡航の当日になって、やっとの思いで本当のことを伝え、そのまま空港に向かう娘。驚愕した父親は、娘を追って、空港の警備員を手持ちの現金で振り切り、娘の乗る飛行機に飛び乗ってしまう。離陸する飛行機の機内。父と娘は、ようやくお互いが本当に思っていることを語り合う。
父は、娘の成長を心から喜んで、数年間の渡航を笑って送りだしてやろうと、決意していたのであった・・・。

まず、観客から見えない部分での意思疎通のやりとりが極めて重要なインプロの公演において、「意思疎通がうまくできない家庭」を演じたこと自体が興味深い。

「メモ書きだけでコミュニケーションする家庭」という、やや現実離れした家庭ながら、父と娘のぎこちないやりとりが非常にリアルで、「話したいんだけど話せない」雰囲気が生きた空気として伝わってきた。
なぜメモ書きだけでやりとりするようになったかは、ストーリーラインには上がってこず、実際にメモでのやりとりもほとんど行われなかったのだが、二人の奇妙なまでのぎこちなさが、目の前にはない、「本当はちゃんと話したいことの裏返し」としてのメモの存在が感じられて面白かった。
よく日常で「他人を無視する」というシチュエーションがあるが、「無視」とは、否定的な関心を対象に対して抱いているとから発生する、相手に対する意志の投げかけの形であり、そこには確固たるコミュニケーションが存在するとスナドリは思う。実際に、対象とのコミュニケーションそのものを元から断ち切ってしまうものは「無関心」なのだ。
目の前には登場しない、その家庭のメモの存在の感じながら、そんなことを思い返していた。

また特に、父親は父親なりに閉め切られた窓を開け、胸襟を開いて、初めて娘を正面から受け止めようと思い立ったた矢先に、娘から旅立ちを告げられる、という展開が興味深かった。
父は、自らの行いを省みることで全力で娘を受け止めることを決意し、娘は、自分自身の生きる道を見つけ、お互いがお互いの意志を強く相手に向けることで、二人の間に、初めてメモを必要としない「対話」が生まれたのである。

まるで、自分自身そのものと正面から対峙することこそが、他人とのコミュニケーションを開くチャンネルであるかのようにも感じさせられる、そんな作品であった。



ロングフォーム以外の、インプロゲームと第2部のインプロミュージカルについては、その2に続きます。


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