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NeXT IMPRO THEATRE 第26回公演 その2

というわけで、レポートのその1からの続きです。

■(続き)第2部 インプロ・ミュージカル 「適当」 インプロチーム:imp

[2]劇評

今回は、とにかくミュージカルの本来的な音楽と歌が素晴らしい作品だった。

全体を通して、正直なところストーリーはやや荒唐無稽な感があったのだが、音楽と歌の力によって、シーンが力強く表現され、そのインパクトによって、客席が強く舞台に引きつけられるような、魅力に満ち溢れたステージであったと思う。

毎回不思議に、かつ素晴らしく思うのは、NeXT IMPRO THEATREのインプロミュージカルでは、シーンの中で歌と踊りが入るたびに、その場面自体に強力な説得力が生じ、観ているうちに、言葉の説明的な意味を意識しすぎることなく、そのシーンの背景や行間的な要素が知らず知らずのうちに深く伝わってきていることである。
即興であるが故、歌の歌詞などは、希に若干意味がおぼつかないように感じるときがあるのだが、たとえ多少前後関係が曖昧な歌詞であったとしても、即興ミュージシャンも含めた全てのプレイヤーの力強く巧みな表現力によって、そのシーンと登場人物の関係や目的などがより感覚的に伝えられ、観ている側がより深く、シーンを理解することができるのである。

今回はそういった力強さを持つシーンが多くあったのだが、最も素晴らしかったのは、精霊の1人(imp:入岡雅人)がロックミュージックをバックにシャウトする場面であった。
このシーンは、非常に興味深いことに、物凄い勢いで「適当」という言葉を叫んでいながら、その精霊は、トーマスがそもそも目指している「完璧」を何一つ否定していない、ということが展開されていた。

「適当」という言葉自体、そもそも辞書的な表現において「ある状態・目的・要求などにぴったり合っていること」という意味のほかに、明示的に「いい加減なこと」という意味がある。
そして、その言葉について精霊は、「てきとーでいいんだ、ぜえーーー!!!」という絶叫を持って言い放ち、その上、ロックミュージックという、本来的に何かに対して反抗や反発することが何よりの原動力となる音楽を背景にして、激しいシャウトでその意味を伝えていた。その場面構造自体、「完璧に対しての適当」という構図であるのに、精霊は、トーマスの目指す「完璧」そのものを否定するどころか、むしろ、より彼が求めるべきところの「完璧」を、その叫びの中に示していたのである。そしてそれは、音楽と歌による強力な説得力によって、観ている側の脳裏に裏打ちされ、背後に存在する大きなストーリーの主軸となって、「これが、私にとっての最善の形です!!」という、ラストシーンに結実していったのである。

つまりそこでは、「適当」という言葉によって「完璧」が語られ、そのことの本質的な意味が、音楽と歌の表現力によって、力強い説得力で観客に深く伝えられていたのである。

そしてさらに興味深かったのは、「完璧」という、一見相反するような言葉がストーリーの開始と共に定義されていながら、それがいくつかの場面を経て、「適当」という言葉によって逆説的に表現され、その二つの言葉の両方が、「私の最善」という言葉に、ストーリーの結末とともに昇華されるという、まるで事前にそれらについて計算していたかのような展開だった。
しかもその上、驚くべきことに、それらのストーリー全体において、日本の伝統工芸である「重箱」がフォーカスの中心となり、日本独自の「曖昧さを含んだ完璧」という概念をプラットフォームとして展開され、それらを土台とした上で、「適当」と「完璧」についての本質的な意味が、全編を通して語られていたのである。

インプロミュージカルという即興の作品の中において、ここまで深く様々な事象を裏打ちしてストーリーが形作られたことは、インプロならではのイエスアンドにしてはあまりにも出来すぎているようにスナドリには思われた。
もしもこのことを、即興による偶然の産物で生まれたと結論づけるのならば、私はそれを心からの賞賛の意味を込めて「インプロの奇跡の力が働いた」と申し上げたい。

また今回は、作品中に即興で歌われたり演奏された音楽のジャンルも、民謡(?)、歌謡曲、ロック、ラップなど数え切れないぐらい多種多様で、出演者および即興ミュージシャン全員の芸達者ぶりが光っていた。
また、シーンの途中で珍しくミュージシャンがキーボードの操作を誤ってしまい、とってもメルヘンな曲が自動演奏で流れてしまうという珍事が発生したのだが、プレイヤーの見事なイエスアンドによってシーンに活かされ、観客を大いに沸かせた。また、そのアクシデントによって発生したシーンが、その後、作品にとって極めて重要なシーンに繋げられ、まさに即興冥利につきるような展開となったことも、とても素晴らしかった。

今回の作品は、インプロミュージカルという形態の作品の中で、音楽、歌、踊り、演技の各要素が、素晴らしい表現力を伴って折り重なり、その重なり合いが互いに影響しあって、インプロの奇跡の力が発現された、名作として数えられるような作品であったと思う。

その3に続きます。

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