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NeXT IMPRO THEATRE 第26回公演 その1

このところ、多忙を極めているスナドリなのだが、毎月1回のこの楽しみだけは欠かさない。というわけで、7月の第26回公演。
いつも、20~40代を中心としたような雰囲気の客層なのだが、今回は、子供たちの姿も目立っていた。年齢を問わず誰でも楽しむことができるのは、NeXT IMPRO THEATREの良いところのひとつ。
最近の傾向に沿って、開演間際までは多少空席も目立ったのだが、最終的には、概ね埋まるような具合。

今回の出演者は、impフルメンバー(入岡雅人、飯野雅彦、奥山奈緒美、秋山桃里)とXpot(矢熊進之助、川添圭太、鉢山あきこ、松本雅子)。全員夏らしい衣装で登場。

今回の劇評は、第2部のインプロミュージカルについてお送りします。

毎度のことではありますが、本記事は、全て、スナドリの記憶と個人的な解釈によってのみ書かれております。特にストーリー解説は、細かい部分で多少正確さを欠いている場合がありますので、悪しからずご了承下さい。
また、ストーリー解説についてのご指摘は歓迎いたしますので、コメントにお気軽にお寄せ頂ければ幸いです。

■劇評:第2部 インプロ・ミュージカル 「適当」 インプロチーム:imp

[1]ストーリー解説

impの3人が並んで舞台に立ち、軽快な音楽でスタート。
それぞれが順番に、「適当」というタイトルから、音楽を背景にセリフを語っていく。

適当な量♪
最善の量♪
てきとおーう♪

奥山奈緒美。最近あまり料理を最近作ってないという話から、調味料などの目分量について。適当な目分量とは、自分にとっての最善の量であるという話。
飯野雅彦。「てきとーに生きてる」って話す人を軽蔑するという話。やはり生きていく中では、何らかの目標が必要なのではないかと。しかしながら、「てきとー」に生きていながら、非常に活躍している人がすることも事実で、それを少し羨ましくも思う。
入岡雅人。どこかへ出かける際に、目的やルートをしっかりと決めるよりも、思うがままに旅をする方が好きだ、という話。

音楽高まり、一気に場面転換。


そこに、ものすごい集中力を放ちながら何の変哲もない箱を重ね合わせる、1人の男がいた。

「・・・はまった!」とその男は叫んだ。
彼が重ね合わせていたものは、日本の黒い重箱であった。

その男の名は、トーマス・ハン(imp:飯野雅彦)。またの名を「全てにおいて完璧を求める男」。彼は現在、日本の京都に滞在し、旅館の一室を借りて、日本の神秘的な工芸品を探究していた。彼が滞在している部屋は、完璧に時間が合っているデジタル時計があったり、完璧な位置取りをするために床に方眼紙のようなマス目が描かれていたりなど、全て彼の意志によって、常に「完璧さ」を追求できるような部屋に作り替えられていた。

そんな「完璧を求める男」にとって、日本の重箱は、極めて神秘的な物体としてその目に映っていた。一見、完璧な寸法で作られているように見えていながら、高温多湿な日本の気候を計算し、ある程度の「遊び」を含んだ設計が施された、正確でありながら曖昧さを兼ね備えた工芸品。トーマスはすっかり、その一見何の変哲もない箱に魅了され、感嘆しきっていた。

そんな彼の部屋に、旅館の女将、絹江(imp:奥山奈緒美)が入ってきた。
この絹江こそが、トーマスを日本に呼び寄せたその人であった。絹江は、トーマスに日本の重箱の存在を伝え、彼に「完璧なる重箱」を作るよう、依頼をしていたのである。制作の状況を話し合う二人。その時既に、彼らは京都弁で語り会えるほどの間柄(笑)となっていた。

実は、絹江がトーマスに重箱の制作を依頼したのは、亡くなった祖父(imp:入岡雅人)の遺言であった。祖父は生前から、その完璧な重箱を制作してくれる人物を捜し求めていたのだが、その願いは叶わず他界してしまい、変わって後継者の絹江が、トーマスと巡り会ったのである。

場面変わって、絹江が幼少の頃。
1日5回(笑)も、重箱の話を祖父から聞かされている絹江。しかも、祖父のその重箱の話は、「完璧な重箱音頭」(?)のような、独特の拍子に乗せた語り口で、祖父は毎度毎度、気持ちよくその話を歌い上げていた。絹江は、そんな祖父に嫌な顔ひとつせず、合いの手(笑)を入れ、常日頃から付き合っていたのだった。
いよっ、はっ、こりゃさという絹江の合いの手をもらいながら、祖父は、自らが理想とする「完璧な重箱」への思いを、声高らかに語っていた。どうやらそれは、日本の文化における「完璧さ」を求めているかのようであった。

トーマスは、来る日も重箱を作り続けた。日にちが経つにつれ、徐々に湿気を計算に入れた重箱を作ることができるようになっていたが、しかしながらトーマスは、彼にとっては異質な「日本の文化における完璧さ」を真に理解することがなかなかできなかった。
そんなある日。トーマスは、絹江の話から、とある樫の木の存在を知った。その樫の木は、非常に長い樹齢を重ねていたが、完璧な重箱を作るのに最も適している素材であると思われた。

話を聞いたトーマスは、さっそくその樫の木へと向かう。妙に寛容な樫の木の管理人(Xpot:川添圭太)に案内されて行ってみると、そこには、実に立派な樫の木(imp:入岡雅人)が立っていた。樫の木は、トーマスを見るやいなや、どういうわけか、不思議な樫の木の舞(笑)を踊り始めた。枝を巧みに動かし、小刻みな枝の振りと滑らかな根さばきで、奇怪に見事な舞を舞う樫の木。その様子に一目惚れしたトーマスは、さっそく幹の一部を切って、旅館に持ち帰った。

ところが、その樫の木には精霊(imp:入岡雅人)が宿っており、幹を切ってしまったトーマスは、その精霊に呪われてしまったのである。

樫の木を使って重箱の制作に取りかかっているトーマスの元へ、その精霊たち(imp:入岡雅人、奥山奈緒美)がメルヘンチックな音楽を背景に、軽やかなステップで出現し、彼に呪いの言葉を投げかけた。

曰く、「キミを呪っちゃうよぉ~!(^o^)」(笑)

その精霊は、メルヘンと言葉の恐ろしさのギャップで見る者に恐怖を与える(笑)生き物であるらしい。とその時、精霊は、トーマスにある条件を出した。真に完璧な重箱をこの幹を使って作ることが出来なければ、このままお前を呪い殺す、と。

トーマスは、そのメルヘンな脅し文句に震え上がってしまい、強大なプレッシャーに押しつぶされた。失敗したら・・もしも完璧だと判断されなかったら・・。
思いがけず、命を賭けた重箱制作に直面し、彼は苦悩し、そして倒れ込んでしまった。完璧を求める男が、他者によって完璧さを要求され、見えぬ他人の完璧の尺度を「完璧に」推し量ろうとして、自滅への道を辿ろうとしていた。
完璧とは一体何か?完璧を完璧に定義する完璧な言葉は、完璧に存在するのか?

倒れてしまったトーマスを、面白そうに眺める精霊たち。
自らの呪いの力に満足しているのかと思いきや、なぜかあっさりと、「ちょっとプレッシャーかけ過ぎたかな」(笑)と言いだした。実は、彼らもまた、トーマスの仕事を待ち望んでいる存在だったのである。

そこで精霊の1人(imp:入岡雅人)が、再びトーマスに語りかけようと、彼に近づく。すると、どこからともなく激しいギターの音が、ぎゃいーんと聞こえてきた。気がつくとその場所は、精霊の力によってハードロックのコンサート会場に変貌し、激しいリズムとともに曲のイントロが響き始めた。突如、精霊は絶叫した。

「てきとーでいいんだ、ぜえーーー!!!」(笑)

ハードなサウンドを放つギターのビートに乗って、精霊は激しくシャウトした。
ステージは、彼の身体から放出される凄まじいメッセージのエネルギーで満ち溢れ、どこからともなく嵐のような風が舞い降り、ステージのサイドの幕を激しく上下させた。怒涛の魂の絶叫。それはまるで、自分の全存在を賭けたかのような、全霊全力の熱唱だった。精霊は、ロックという音楽が本質的に持つエネルギーの力を借りて、世界の中心に向かって「適当」を叫んでいた。
その叫びは、青く太い稲妻となって、地響きが起きんばかりの衝撃ともに、ステージに轟き渡った。

トーマスは、その稲妻の直撃を受け、文字通り打ち震えた。その時、彼の中の何かが木っ端微塵に打ち砕かれたようであった。


そして、トーマスはその日から、旅館の部屋を閉め切って、重箱制作に没頭した。
時には「マシカク」というラップの曲に乗って、彼が最も得意とする直線的な物体表現を使い、樫の木の幹から重箱を形作っていった。まるでそれは、樫の木の中に、あらかじめトーマスが作る重箱がしまいこまれているかのようでもあった。

あまりに長期に渡って部屋から出てこないため、女将の絹江は心配でたまらなかった。絹江の母(imp:入岡雅人)は、トーマスの仕事を邪魔しないよう、絹江をたしなめたが、絹江は、どうしてもトーマスのことが気になり、部屋の前を行ったりきたりするのであった。開けたいわ・・開けちゃダメ。会いたいわ・・まだなのよ。歌謡曲のデュエット(笑)のごとく、自らの思いを吐露する絹江。その曲は、絹江のトーマスに対する気持ちそのものでもあった。

しかし、中があまりにも静かなので、絹江は思い切って、中へ飛び込んだ。

おそるおそる部屋の奥へ足を踏み入れる絹江。
締め切られた部屋の中、トーマスは生きていた。
そして、彼の眼前に、完成した重箱が置かれていた。
「これから最後の仕上げです・・」とトーマス。

ガン!

何と、その仕上げとは、トーマスのぶっきらぼうなひと蹴り(笑)であった。
もうここまで来れば、これでいいんです!と、晴れやかな笑顔のトーマス。
ついに「完璧なる重箱」はここに完成したのである。

そして、トーマスに勧められ、絹江はその箱を重ね合わせていった・・・。
少しずつ。
少しずつ。
彼女の手によって、わずかながら蓋が乗せられていく「完璧なる重箱」。
それはまるで、重箱自体が絹江の様子を少しずつ確かめているかのようにも見えた。そんな様子をトーマスは嬉々として見つめている。

その時、重箱の蓋は、ある角度で斜めになったまま停止した。

そして絹江は言った。「これが、私にとっての最善の形です!!」

そう。トーマスが作った「完璧なる重箱」とは、使うものの意志や用途、そしていかなる性質、状態、要求などに対しても、工芸品としての美しさを全く損なうことなく、極めて柔軟にその蓋を合わせることが出来る、「あらゆる「完璧」を受け入れる重箱」であった。

「適当」とは、「完璧」という、ある特定の固定化された尺度を柔軟に変異させることであり、それをあるゆる局面において柔軟に摘要できる性質こそが、そこで語られている真の「完璧さ」だったのである。

そのことを見事に表現したトーマスの「完璧なる重箱」の完成は、他界して霊魂となった祖父を大いに喜ばせた。絹江が継いだ使命は、トーマスという卓越した才能と、樫の木という素材、そして、「適当」という言葉の意味をロックとシャウトで伝えた精霊たちによって、見事に結実したのである。

適当な量。
最善の量。
適当。

三人が再びその歌を高らかに歌い上げ、終幕。


劇評は、その2に続きます。

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