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NeXT IMPRO THEATRE 第29回公演 4:劇評

その3からの続きです。


今回は、第1部、第2部とも、新しい試みがとても面白かった。

第1部最後のシネマガイド+ラジオドラマ+タイプライターの組み合わせは、それぞれのゲームの特性がとてもよくマッチしていて、これまでのタイプライターのみの作品よりも、ストーリーに大きな厚みが増していたと思う。

特に冒頭のラジオドラマによる導入は、観る側の想像力が力強く働いてきて、実際にシーンを見せるものとはまた異なった奥行きのある臨場感があり、比較的大きな流れをもっていたあらすじに対して強固なストーリーの主軸を打ち立てていた。
インプロのストーリーは、時々、やや荒唐無稽な展開が繰り返されることがあったりするのだが、ゆるぎないストーリーの主軸があることで、フィクション性の強い作品ながら、展開に強いリアリティが感じられた。
特に素晴らしかったのは、父親であるライアンと息子のジョセフの関係だった。物言わぬのにジョセフは実に表情豊かで、こちらの想像力をより押し広げ、二人の関係性がとても豊かに描き出されていた。ライアンがジョセフを元気づけようとすると、彼の胸の底にある不安が逆にジョセフに映し出され、ますます親子の信頼が揺らいでいくという構図は、心を閉ざしたジョセフ自身が、まるでライアンの鏡があるかのように感じられた。
またその後の展開も、息子の命を取るか親子の信頼を取るかという、一種不思議な究極の二者択一であったのが、とても興味深く、終演後も楽しませてくれるほどスナドリの印象に強く残った。
それはやはり、突如として舞台に登場したマーチングバンドが大きく係わっているからであろう(笑)。

また第2部の観客からMDを拝借して音楽を決めるというオープンニングは、非常に大胆で、興味をそそられた。

即興ミュージシャンによる音楽も、舞台上のストーリー展開に素晴らしい相乗効果を生んでいるのだが、今回は、冒頭の音楽一つで街や人々の情景、ストーリーの主軸となる空気や、世界観などがプレイヤーによって一気に形作られ、音楽が持つ強力な力を改めて感じさせられた。
また、後半に親分のアルフレッドがゴロゴロされようとする場面で、音響スタッフが絶妙なタイミングで冒頭の音楽を再度流し、重要なストーリーの山場を作るのに大きな役割を果たしていた。
照明は即興ミュージシャンと共にシーンを形作るの一員として加わっており、限られた設備の中で、いつも素晴らしい反射神経によるライティングで観客を魅了しているが、音響スタッフはオープンニングやシーンの間の音響のみで、シーンに直接関わることはこれまではほとんどなかった。
決まり切った曲を秒単位で刻々と変化するインプロのシーンに流すことは非常に難しいことであると推察されるのだが、そんな中で今回は本当に見事なキューイングでクライマックスのシーンを盛り上げ、観る側に強い存在感を示していた。

また、一つ思ったのは、今回観客でMDを持っていた人物はわずか1名であったのだが、近年の携帯音楽プレイヤー全盛の時代に、選択肢がMDかCDのみというのは、やや範囲が狭いような気がした。
むしろ、iPodなどのような音楽プレイヤーも舞台音響装置で外部入力などから再生可能であれば、さらにより多くの観客から曲を受け付けることができるのではないかと思われる。
また、iPodの場合は特に、プレイヤー自体が使用している人自身の音楽の好き嫌いや1曲1曲の曲調まで判断して音楽をランダムに並べ替える、非常に優れた「シャッフル」機能を持っているため、観客のiPodにシャッフルをさせて、並べ替えられた順のままでシーンのいつくかの場所で流す、という方法も面白いのではと思った。
つまりその場合は、その観客の音楽の趣味が、そのまま舞台の展開に反映されるというわけである。

今回は、そんなようなことまで帰り道に考えさせられる、今後の新しいインプロの可能性を感じた公演であった。

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» 使い倒したI-pod [リアルスタイル]
もうI-podを使い始めてから2年くらい経ちます。家でダウンロードした音楽を聴いたり、車でもCDの変わりにI-pod繋げて聴いてます。 [続きを読む]

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