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NeXT IMPRO THEATRE 第29回公演 2:タイプライター

その1からの続きです。


imp、Xpot:タイプライター

ゲームショウ最後となるタイプライターは、タイプライター役の人物がストーリーを時折語っていきながら、お話を作っていくというゲーム。ところが今回はなんと、シネマガイドとラジオドラマの2つのゲームをタイプライターの中に取り込んだ、豪華版タイプライターとして上演された。
シネマガイドとは、映画の解説集の本を用意して、観客にランダムなページ番号を言ってもらい、そのページに書かれている映画のあらすじを元にストーリーを作っていくというもの。そして、ラジオドラマは、その名の通り音声だけでお話を作るというゲーム。明かりをやや暗めにして、身体表現は一切使わずに、セリフ、ナレーション、音響効果だけでストーリーを演じる。いわば、即興生放送ラジオドラマ、といったところ。

まず、観客にシネマガイドのページ番号を選んでもらう。そのページにはこんなあらすじが書かれていた。

「妻子の目の前で、皇室一家を救出するライアン。しかし、彼は、テロ集団から恨みをかってしまい、家族の命が狙われる。」

このあらすじを元に、タイプライターをラジオドラマモードにてスタートした。
タイプライター役はimpの奥山奈緒美(ナオミ)。

銃声と悲鳴。底の硬い靴の足音とドアを蹴破る音。皇室一家のいる宮殿にテロ集団が忍び込んだ。偶然、そこに家族と共に居合わせた警備員のライアン(イリ)。彼は、家族を守りつつ、襲ってきたテロ集団に戦いを挑んだ。
子供たちを背に抱えながら、彼は必死に戦った。警備員ながら長きにわたって格闘技を学んでいたことが功を奏し、テロ集団をなぎ倒す。そして最後に生き残ったリーダー(マサ)を追い詰め、見事逮捕する。そうして、そのテロ集団の試みは失敗に終わることとなった。
しかし、その様子をずっと監視している男の姿に、ライアンは気づかなかった・・・。

そうして、ラジオドラマモードは終了し、タイプライターの舞台に切り替わった。

そのテロ事件の功績により、ライアンは警備員から皇室付きのボディガードに出世していた。皇后さま(はっち)から、厚い信頼を受けるライアン。しかし彼は、あの事件の日から、いつも家族のことが心配でならず、仕事が終わるとどこにも寄り道せず、まっすぐに家へ帰る日々を送っていた。

自宅には、あの事件から性格が暗くなってしまった息子のジョセフ(しんのすけ)がいた。ジョセフは、すっかりモノを話さなくなり、いつも人物を真っ黒に塗りつぶす絵を描いていた。それを心配に思い、ライアンは奇妙な身体の動き(笑)で元気づけようとする。しかし、ジョセフは一向に父親のライアンに心を開こうとはしなかった。

そんなある日、ジョセフは不思議な手紙を渡された。今夜夜遅くにある場所に来れば、お父さんの秘密を教えてあげるよ、と。興味を覚えたジョセフは、父親に内緒で、その手紙に導かれるまま夜遅く一人でその場所へ行ってしまった・・。

そして、その場所。彼は驚くべきモノを目にしていた。

ズンダンズダンズンダンズダン!ダラララララ!
ドンドンカカンズダンズダンダン!ダラララララ!
「いらっしゃい!」

そこで彼を出迎えてくれたのは、なんと小気味良いリズムで太鼓を叩き、とっても楽しげに行進を続けるマーチングバンドであった(笑)。ジョセフは、少し意表を突かれたことにうろたえ気味であったが、そのリズミカルな太鼓の音を聞いているうちに、心の中に楽しい気持ちが芽生えていった。バンドのリーダー(マサ)にあたたかく迎えられるジョセフ。

ズンダンズダンズンダンズダン!ダラララララ!
ドンドンカカンズダンズダンダン!ダラララララ!

そんなリズムに乗ってマーチングバンドたちと一緒に行進しているうちに、ジョセフは、ついにその楽しさに心を開いてしまった
しかしそのリーダーは、あの事件を遠くから監視していた、テロ集団の生き残りのアルであったのだ。彼は、やや興奮気味になっているジョセフに、持っていたそのドラムをプレゼントしてあげた。ジョセフは大喜びして、それを家に持って帰った。

そして次の日。
静かな早朝のライアンの家に、けたたましい太鼓の音が鳴り渡った。何事かとライアンが起きてくると、そこには、爆弾のタイマーが付いた太鼓を嬉々として叩くジョセフの姿があった。
驚いているライアンの元にすかさず電話が入る。出るとそれは、テロリストのアルだった。電話口で勝ち誇った高笑いをするアル。それはまさに、あの事件の復讐であったのだ。
ライアンはジョセフに太鼓を渡すように説得をするが、すっかり太鼓が気に入ってしまったジョセフはそれを渡そうとしない。ライアンは焦りから、無理矢理ジョセフから太鼓を奪おうとした。しかし、ジョセフは「バカ!」と言って、太鼓をしっかり抱えたまま、外へ走り出てしまった。

「ジョセーフ!」
ライアンも必死に後を追った。

そうして二人は近くの公園までやってきた。

ライアンは焦っていた。ジョセフにとってあの太鼓は、やっと手に入れることができた唯一の楽しみだ。もちろん無理矢理奪ってしまうことはできるが、その時はライアンはジョセフからの信頼を今度こそ本当に失ってしまう。しかし命には代えられない。そうしている間にもタイマーは動き続け、もう時間は残っていない。一体どうすればいいのか。
テロリストのアルは、巧妙に仕掛けられた自分の罠が見事に機能しているのを、彼らの近くまでやってきて満足そうに眺めていた。

「あのバカ息子が太鼓を離すはずがない。お前が奪うしかないんだぜ。父親のお前が!さあ苦しめ!苦しめ!ははははは!」

ライアンは必死に考えぬき、太鼓よりも楽しいことを見せればいいんだと思いついた。
そして、おもむろに地面の石を拾い上げると、公園の池に向かってサイドスローで投げ始めた。

シュッ、テン、テン、テン、テン、テン。
シュッ、テン、テン、テン、テン、テン。

石は、水を切るようにして水面を跳ね、小気味よいリズムを奏で始めた。

シュッ、テン、テン、テン、テン、テン。
シュッ、テン、テン、テン、テン、テン。

そのリズミカルな楽しさにジョセフは少し気を許し始めた。

「お前も何か投げてみろ!ジョセフ!」。

ライアンは必死だった。
するとジョセフは、その音にすっかり興味をそそられたのか、なんと、持っていた太鼓を差し出したのである。
同時にアルは顔色を変えた。

「そうか。じゃあ、身体を回しながら遠くへ投げるんだぞ!せーの!

ジョセフとライアンは、高らかに太鼓を投げ飛ばした。
その方向は・・・。

「や、やめろ!やめるんだー!」

爆弾はアルの元で見事に爆発した。

爆風がすっかりなくなって、身を起こしたライアンの顔には、安堵の表情が浮かんでいた。自分の身に何が起こっていたのか、全てを理解したジョセフ。おそるおそるこう口に出した。

「お父さん・・・ごめんねお父さん」

ライアンはかぶりをふって、こう言った。

「いいんだ。お前は悪くない。自分の仕事にお前たちを巻き込んだ父さんが悪いんだ。お前は・・・愉快に生きろ。」(笑)。

そうしてライアンは再び家族を守り抜いた。
ジョセフは、自分を守ってくれた父に心を開き、すっかり気に入った太鼓を叩くべく、マーチングバンドへ入団した。

ズンダンズダンズンダンズダン!ダラララララ!
ドンドンカカンズダンズダンダン!ダラララララ!

ジョセフは、生き返ったような表情で、喜びいっぱいに太鼓を叩き、その音はいつまでもいつまでも街の空に鳴り響いたのであった。


その3へ続きます。

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